医薬品業界「GDP」の基礎知識。GDPとは?GMPとの違いは?

医薬品業界におけるGDPとは?

GDPとは「Good Distribution Practice」の略

日本国内におけるGDPガイドラインは、Good Distribution Practiceの略で、日本国内において医薬品の「輸送」や「流通」が適正に行われるようにまとめられた、医薬品に関わる流通管理のガイドラインのことを指します。

医薬品の「適正流通」に向けたガイドライン

GDPは、PIC/S GDPガイドラインをベースにして、厚生労働行政推進調査事業の中で行われた「GMP、QMS 及びGCTPのガイドラインの国際整合化に関する研究」の分担研究である 「医薬品流通にかかるガイドラインの国際整合性に関する研究」(GDP研究班)の中で定められました。

医薬品業界の「流通」には、多くの人々が関与するため必要

GDPが定められた背景として、今日の医薬品の流通経路がますます複雑になってきており、医薬品の仕入、保管、供給等のさまざまな流通過程において多くの人々が関与するようになってきたことがあげられます。

医薬品の完全性を保持し、偽造医薬品の流通等も防止

医薬品を取り扱う、卸売販売業者等の業務を支援し、流通経路の品質管理・温度管理が保証され、偽造医薬品が正規流通経路へ流入することを防いだり、医薬品の完全性を保持するための手段として、厚生労働省が広く周知し、卸売販売業者等における自主的な取組を促すことを目的に2018年12月に発出されたのが医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインなのです。

GDPガイドラインの目的

GDPガイドラインが制定された目的は大きく以下のポイントに現われています。

(1)流通工程での高水準の品質保証

自社のみならず、取引先すべてが適切な資格や認証を保持しているかどうか、正しい運用を行っているかどうかを確認し、品質を保証すること。

(2)「医薬品の完全性」の保証

「医薬品の完全性」とは、出荷された製品が、その品質を損なわれることがない状態を指しています。温度の変化による変質や、衝撃による破損などが発生しないよう注意を払って輸送することが求められます。

(3)偽造された医薬品の混入防止

輸送時の商品管理が正しかったとしてもその製品が偽造品であれば重大な事案となります。そのため、偽造された医薬品の混入を防ぎ、万が一、偽造の疑いのある医薬品が発見された場合にも適切な対策をとることが重要です。

また、このガイドラインは、卸売販売業者等が個々の会社の実態に合わせた規則を作る際の参考にすることも目的としており、大きくとまとめると「適格性を持った業者が」「正規の品質を保持したまま」「偽造品が混入しないようにする」ために順守すべきルールを作るためのガイドラインと言えます。

GDPとGMPの違いは?

GDPは(Good Distribution Practice)の略で、GMPは(Good Manufacturing Practices)の略。

日本語に訳すと、GDPは「医薬品の適正流通の基準」で、GMPは「医薬品の製造管理及び品質管理の基準」となり、「製造工程」における品質管理を担うGMPと、「流通工程」における品質管理を担うGDP。両方を合わせることにより、川上から川下まで医薬品の品質保証を包括して行える形となっています。

GMP(Good Manufacturing Practice)は、「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」に規定されています。

GDP(Good Distribution Practice)については、「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」に規定されています。

GDPガイドラインの歴史

2017年に発覚した「ハーボニー配合錠偽造品流通事案」はGDPガイドラインに大きく関わる事案として取り上げられることが多く、この事件がきっかけとして制定されたと認識している人も多いのですが、実は、政府としては適正流通に関わる検討をそれ以前から進めていました。

政府資料によると、2015年に策定された医薬品産業強化総合戦略内で「市場の変化や社会的要請に対応する流通のあり方」として「PIC/SのGDPに準拠した国内GDP の策定の検討を行う。」と記述されています。

その後、2016年度に厚生労働科学研究「GMP、QMS 及びGCTPのガイドラインの国際整合化に関する研究」の分担研究として「PIC/S GDPの日本語訳案と日本版GDPガイドライン素案の作成、課題のとりまとめ」が行われました。

そして、2017年度に日本版GDPガイドライン素案(GDP GL素案)に対し、業界内での対応状況と意見、要求などを調査。

2018年度に、最終版としてPIC/SのGDPガイドライン全般に準拠した国内向けGDP ガイドラインを策定しました。

GDPガイドラインの構成とポイント

GMPと同じ構成となりますが、適用範囲が異なり、出荷後の保管・供給業務に適用されるという点がポイントになります。

  • 緒言
  • 目的
  • 適用範囲
  • 第1章 品質マネジメント
  • 第2章 職員
  • 第3章 設備及び機器
  • 第4章 文書化
  • 第5章 業務の実施
  • 第6章 苦情、返品、偽造の疑いのある医薬品及び回収
  • 第7章 外部委託業務
  • 第8章 自己点検
  • 第9章 輸送

GDPガイドラインに沿った運用のポイント

(1)目的(品質維持、偽造品混入阻止)達成のために「経営層から現場まで医薬品流通に関わる全員」がエンドユーザーの手元に品質保証された医薬品を届ける意識を持ち、業務に取り組むこと

(2)必要となる設備や機器の導入、人員の配置を行うこと

(3)マニュアルを整備し業務の平準化を進めること

(4)自己点検を行い改善活動を推進すること

品質保証で特に気にしたいのは「温度管理」

工場内では温度管理された環境下で製造されているものの、輸送時は季節や時間、天気、日照条件など温度が変化する要因が数多くあります。

そのためGDPでは温度マッピングを実施することを求めています。

前述の季節や時間などの要因の他、入口近くと奥、空調からの距離、荷物の積まれ方など様々な要因を考慮したうえで適正範囲内に温度帯が維持されているかを確認しなければなりません。

まとめ(日本のGDPの現状)

  • GDPは医薬品の流通工程での品質保証を目的としたガイドラインです。
  • GMPは製造工程、GDPは流通工程を担当することで製品供給工程全体をカバーしています。
  • 日本のGDPはまだできて間もなく、周知徹底されるまでには時間がかかると考えられます。
  • しかし、国内でも大きな事案が発生し、流通に対する信頼性が求められる中、GDPガイドラインに準拠した取り組みを行うことは卸売販売業、製造販売業を営む企業において大きな付加価値となり得ます。
  • 中でも温度管理は品質管理において重要なポイントとなり、管理体制の構築は急務と考えられます。
  • 今後厚生労働省がより普及活動に取り組む中、先行者としての立ち位置を確保することは企業価値を高めることにつながるのではないでしょうか。

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