既存工場内に高薬理活性製剤製造施設構築(改修工事)


 
生産対象の高薬理活性製剤の毒性分析を行い、工程ごとに最適な封じ込め対策を施した製造ラインを、既存工場内の制約あるスペースに構築しました。

製造品目 高薬理活性製剤(散剤)
生産能力 30kg/バッチ
工場概要 延建築面積 250㎡

ご検討の背景

O薬品様では、製造委託先からの製品の製造を中止するとの通達に伴い、対象の高薬理活性製剤の供給を継続するために、自社にて生産していくことを決定しました。ただ、生産量が少ないため、既存工場のスペースを活用し、できるだけ投資額を抑え、かつPIC/S GMPに準拠した施設を短工期で構築したいとの要望がありました。 

主な課題

1.PIC/S GMPに準拠した施設

  • バリデーションドキュメント体系の確立

2.封じ込め(コンテインメント)対策

  • 毒性分析と封じ込め規定に基づく対応

3.メンテナンス性・短工期対応

  • 製造への影響を最小限とした保守作業

平原エンジニアリングサービスからのご提案・実施内容

1.バリデーションドキュメント体系の確立

URSVMPDQの作成、品質リスクアセスメント、インパクトアセスメントなどの運用(書式作成、承認日程、全設備/機器への展開)指導、IQOQ計画書/報告書作成支援、PQ支援を行い、最近の査察で指摘される一貫性のあるバリデーションドキュメント体系を確立しました。

2.毒性分析(OELADE)と封じ込め規定に基づく対応

対象の高薬理活性物質の毒性分析を行い、事前に規定したバリデーションマスタープランの封じ込め規定に基づき、曝露限界区分のカテゴリー分類と、工程や薬剤の状態毎の想定曝露区分から封じ込め性能設定を行い、必要な封じ込め対策、ハンドリング方法の策定を工程毎に行いました。

また、ハザード物質の飛散、流出防止のためのバリア構造について、一次バリア(秤量ブース、グローブボックス、生産機器)、二次バリア(空調、内装)、三次バリア(ISS)を設定し、各設計方針に基づき、封じ込め施設を構築しました。

製造作業終了後、ミストシャワーで全身を湿潤させ、帯同粉体の飛散防止をしてから、クリーン作業衣を脱衣、廃棄する手順としました。

工程間のハンドリング方法や、各機器への供給方法について、工程毎に求められる封じ込め規定と実作業性を考慮して、使用容器、運搬の仕方、供給の仕組み等の提案を行いました。

3.天井歩行パネルの採用

天井歩行パネルを採用したことにより、天井裏と室内側(天井下)の同時作業が可能となり、目標工期での施工を可能としました。特に勾配を要求される精製水配管は、他設備のダクト、配管との取合い調整がしやすく、通常天井とくらべ容易に施工できました。また空調・電気業者の手待ちも少なくなり、効率的に作業を進めることができました。

キャットウォーク等の限られたエリアではなく、ほぼ天井裏全域を移動できるため、保守・保全作業性も向上しました。

プロジェクトの成果

 一貫性のある思想のもと、高薬理活性物質を扱うための封じ込め施設を限られた時間の中で構築することができました。特にバリデーションドキュメント体系を明確化したことで、GMP体制の更なる強化を図ることができました。製品の品質はもとより、製造現場の作業性や、作業員の安全・安心な製造環境を確立することができました。