5分で学ぶ温度マッピング:あなたの疑問に答えます

厚労省から「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」が2018年に発出されてから時間が経ち、温度マッピングという言葉もかなり浸透してきたのではないでしょうか。しかし言葉自体にはなんとなく聞き覚えがあっても、いざ自分が温度マッピングの計画を立てる立場になった時、実はよく分かっていなかったのだと感じることがありませんか?
今回のコラムは温度マッピング初心者様向けの用語解説とさせて頂きます。

Q1. 温度マッピングとは何かもう一度簡単に説明して下さい。

A1. 医薬品はその品質を保つために保管温度が定められています。輸送や保管において、保管場所の温度が適切であることを管理するために、保管場所の温度分布を測定して、適切な温度を維持できているかどうかを確認する手法です。
例えば、大きな自動倉庫の建物の中の温度が均一でないことは何となく想像できると思います。南側の壁には昼間は日差しが当たって温度が上がり、外壁を伝わって内部の温度を上昇させます。そして空気の対流によって倉庫の上部の温度は高く、下部は低くなります。もちろん建屋内の温度を一定に保つために空調設備を設けるのですが、高さが20m以上もあるような自動倉庫では高さや方位による温度の偏りを完全に取り除くことはできません。もし医薬品の決められた保管温度を逸脱する場所に医薬品を保管していたら、その品質を低下させ、不具合につながる可能性があります。
このようなことを起こさないために、輸送施設や保管施設内部の温度分布を測定し、その特性を把握することを温度マッピングと呼びます。

Q2. 温度マッピングの測定方法を教えて下さい。

A2. WHOのガイドラインなどに基づいて、垂直・水平方向に網目のように温度センサーを配置し、数日間連続的に温度を記録します。
温度センサーは一般的に電池式でスマートフォンよりも少し大きい程度の機器で、内部のメモリーに温度を記録できるようになっています。温度センサーをしかるべき位置(こちらのコラムをご参照ください)に配置・測定し、測定後は温度センサーをパソコンに接続してデータを読み込みます。パソコン上でデータをグラフ化するソフトウェアが用意されていますので、それぞれのセンサーが置かれていた位置での温度の推移を可視化することができます。
温度センサーは、温度マッピングを行う数日間しか使わない物ですので、レンタル品を使うことが多いです。大型の倉庫の場合は数十個から百個を超えるセンサーが必要となり、ひとつのレンタル会社で用意しきれない場合がありますので、早めに準備をしておかなくてはなりません。

Q3. ホットポイント、コールドポイントとは何ですか?

A3. 網目のように平面的・立体的に温度センサーを配置して一定期間温度を測定すると、温度がいつも高い場所と低い場所が特定され、それらをホットポイント、コールドポイントと呼びます。その場所における温度が医薬品の保管温度内に収まっていれば、他の場所も保管温度内に入っているであろうと推測できます。一般的に夏季の温度マッピングによってホットポイントを特定し、冬季の温度マッピングによってコールドポイントを特定します。

Q4. 温度モニタリングと温度マッピングの違いは何ですか?

A4. 温度モニタリングは日常継続して行う温度監視、温度マッピングは一時的な温度測定です。輸送/保管施設には常に温度を監視できるよう温度センサーと記録装置を持つモニタリングシステムを設けますが、そのシステムには温度マッピングと同じように数十カ所にセンサーを設けることはなく、1カ所から3カ所程度のセンサーで温度を監視することがほとんどです。温度マッピングを実施することによって、前述のホット/コールドポイントと常設監視センサーの温度差が何℃以内に収まっていれば、施設全体の保管温度が適切に保たれているということを把握できるからです。

Q5. 温度マッピングはいつ実施すればよいですか?

A5. まず保管施設を新築したり改修したりした後の施設稼働前の実施は必須です。稼働後、夏季と冬季の両方で数回温度マッピングを行い、季節による温度分布の傾向が把握できた時点で、その後の温度マッピングを例えば夏季のみとするか、1年空けるか2年空けるかなどの検討をした上で方針決定することが推奨されます。定期的な温度マッピングを継続することにより、空調設備の経時的な能力低下による温度分布の変化を捉えることができます。
また間仕切り変更などにより保管場所自体の大きさが変わったり、空調設備の改造や置換をするなど温度分布に影響を与えるような改修を行った際には、改めて温度マッピングを実施して施設の温度分布の特性を確認しなければなりません。

 

ここまで、誰もが持つであろう疑問を5つ挙げてみました。

AIが発達しつつある今、ネットで質問を投げかければ当たらずとも遠からずの回答を簡単に得られる時代になってきました。しかしAIは基本的にネット上に散らばった知識を寄せ集めて出力することしかできません。ガイドラインの本文はもちろん、それを解説した記事にも書かれていないことがまだまだたくさんあります。
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