1980年頃の医薬品エンジニアリングとGMP 工事現場の巡回・立ち合い編
3現主義:現地・現物・現実での確認
工事が始まると机に座っている時間は少なかった。毎朝、工事業者と当日の工事予定を確認し、現場へ立ち合い、巡回に行くことが通常業務となっていた。所謂、IQ(Installation Qualification:据付時の設備適格性評価)の一部である。デスクワークは早朝と夕方に集中してやっていたと思う。現場巡視は工事安全面の確認も目的であった。上司(係長・課長クラス)も頻繁に工事現場巡視を行っており、工事中には現場へ行っているのが当然という教育を受けていた。
現場指示での変更・最適化
現場立ち合いはP&ID(Piping & Instrumentation Diagram)、配置図、配管図等の設計図書との照合が最も重要な作業であった。 配管図面にはない現場合わせの部分や既設設備等の取り合い部分の確認も必要であった。現場立ち合いの主な目的は、要求仕様の通りに工事が行われているかを現場で確認することであるが、仕様書や図面通りに施工できない場合も多々あり、現場指示での変更を行うことは必要であった。
変更管理の手順は無かったが、変更内容を設計図書へ確実に反映させることが重要であった。設計図書の変更は工事完了までには行っていたと思う。
配管図面はP&ID通りに設計されていることは確認済であるが、配管ルートなどの変更を行う場合はP&IDへの変更が及ばない範囲であるため現場確認が重要であった。(P&IDの変更が必要な場合は変更の影響の評価を関係者と行う場合が多い)
自動弁・計器類の取付けに関する変更が発生する場合は、メンテナンス性を配慮した設計が落ちるケースがあり、計測器類の担当者への変更可否の確認も必要である。
現場立ち合いで、要求仕様100%達成
毎日の現場立ち合いが仕様確認そのものであったので、IQ内容の実質的な完成度は非常に高かったと思う。ただし、IQの要求事項は実施していたが、文書化は最低限の範囲であった。
設置済のタンクや製造機器が工事中に損傷しないように養生することにも気を使った。 配管工事等で発生する鉄粉がステンレス機器へ付着して錆が発生しないように十分な保護が必要である。
法規上必要な項目や重要配管の気密試験や精密機器の据付記録等は残していた。 特殊な材質を要求するものはミルシートを完成図書としてまとめていた。
設備の要求仕様(URS)は最重要である。しかしながら、それを確実に実現できてこそ最良な設備と言える。配管・配線1本1本が的確に工事されてURSが100%達成された設備こそが「設計を再現した設備」といえる。
IQは重要な設備適格性の確認の一つであることは皆さん認識の通りですが、人任せではなく、エンジニア自身が確実に確信をもって検証することが必要であり、重点志向でも良いと思う。皆さんはどのようにされているでしょうか?
今は少なくなった楽しかった仲間との時間
工場では、運動会や職場対抗のスポーツ大会、文化祭が盛んで、みんな積極的に参加し、一生懸命応援して楽しかった。生演奏の歌謡大会や見物人に囲まれたマージャン大会、熱く応援した輪投げ大会、など思い出が尽きない。夏は職場の仲間や上司と週末に海へキャンプによく行った。若手の幹事が頑張っていたのだろうが自然と話が決まって、バーベキュー・海水浴・スイカ割・花火などを新婚夫婦も参加し楽しんだ。上司も参加していたが、幹事が気を使っていたのであろうと推察する。
今は遠き「1980年代」とはそういう時代である。
1980年代、医薬原薬工場工務部門時代の回想-。
時代が移り変わる中、現代や未来の「医薬エンジニアリング」がどうあるべきかを、これからもみなさんと考えていきたい。