【現地レポート】PDA・FDA合同会議に参加しました

PDA/FDA 合同会議に参加して

日程

2017年9月11日~13日

会場

米国ワシントンDC, Renaissance Washington

目的

  • Conferenceのホットトピックを入手し、情報として知見を深める。
  • FDA(Regulator)とPDA(製薬企業など)との関わりを知り、グローバル展開の実情を知る。
  • Conference参加者と面会し交流する。

概要

  • 「新技術導入」、「サプライチェーンの複雑さ」、「グローバル化」がもたらす品質課題に焦点があった。
  • 「イノベーション/規制、ライフサイクル、製品品質」の三つの分科会に分かれ様々な議論がされた。
  • 上記の各トピックは複雑に絡み合っているため、各立場の連携が必要ということが終始協調されていた。

内容

1.新技術として、再生医療・コンビネーション製品・希少疾病用医薬品(Orphan Drug)の導入促進  

FDAの導入促進の施策として、ブレークスルーセラピー(Breakthrough Therapy:画期的治療)としての指定による優先審査・加速承認があげられていた。FDAと企業側において開発段階であり、レギュレーションに関する言及はまだなかった。

FDA側としては審査・承認体制の整備し既に実績があることを強調しており、企業側としてはCMC Chemistry, Manufacturing and Controlの略で、申請書類における原薬・製剤の、Chemistry化学・ Manufacturing製造・Control品質管理の情報)の知識をCDMOContract Development Manufacturing Organization:医薬品受託製造開発機関)への移行、CMOContract Manufacturing Organization:医薬品製造受託機関)ではなくCROContract Research Organization:医薬品開発受託機関)への技術移行がスピードアップのキーとしている。

2.医薬製造体制の変化に伴うサプライチェーン(Supply Chain:供給連鎖)の複雑性への対応

新技術導入促進にあたり、企業側の医薬品製造体制のグローバル化が進む中で、サプライチェーンが多様化することへの対応の必要性が言及されていた。
特に、データインテグリティを保証するシステムの重要性が問われており、FDA2023年迄にサプライチェーンセキュリティシステム(Supply Chain Tool Kit)を構築するとしている。
また、Contract Manufacturing Arrangement(委託加工契約)のFDAファイナルガイダンスを紹介された。

3.新技術導入のスピードUPに伴う規制のハーモナイゼーション

MRA(EUとの相互承認)についてFDAはどう考えているか?
コンビネーション製品に関する情報をEUや日本はメディカルデバイス委員会などで発信しているがFDAはこれらの規制のハーモナイゼーションをどう考えるか?
などの質疑が交わされていた。ただ、具体的な話には至らなかった。

4.感染症よりも慢性病が特に先進国では増加

感染症よりも慢性病が特に先進国では増加しており、科学的データに立脚した技術革新に即した医薬品や医療機器の革新的製品が望まれている。
それに即応した企業側の対応と規制当局の迅速な審査が喫緊の課題となっている。
今後は、スマホ(携帯電話)の医療機器への活用が急速に拡大化することが予想される。

5.不治の病とされてきた疾病に対する治療法

今後は、難病、奇病、例えば、血友病などの不治の病とされてきた疾病に対する治療法が開発され、改善から治癒の方向へと進化していくことが、特に遺伝子治療の分野に期待されている。

6.次世代の生物製剤製造施設

次世代の生物製剤製造施設は、迅速で融通性あるモバイル工法(例:モジュラー方式)による稼働方式が主流となる。
2017年中にAMGENのシンガポール工場で、このモバイル方式による新工場が完成予定である。

7.その他

新技術導入の促進は開発からの連携、データの信頼性が大切である。 ラージスケールからスモールスケールへ移行しており、微生物実験室においても単なる実験ではなくコマーシャル並みのデータインテグリティが必要であるなどのトピックもあった。

所感

FDAは患者に安全で有効な製品を届けることに誇りを持っており、企業に対し甘えは絶対に許さない、approve, convinceという言葉が非常に耳に残った。
また、FDAPDAの合同カンファレンスであるが、プレゼンターはほぼFDAでありQ&A発言者もFDA関係者が多数をしめており、FDAのコミットメントに対する圧倒的な誇りと力を感じた。

?とある日の夕食
アメリカンサイズのロブスターに驚愕

場外トピックス

連続オンライン微生物モニタリングについて

1.USP,JPにある最新先端技術(RMM:Rapid Microbiological Method)の記載に基づく方向性

アメリカでは既に微生物迅速試験法は認められてきている。ヨーロッパではEPに収載はされているが受け入れられていなかった。 
しかし、近年受け入れられ始めており、今後、微生物迅速試験法の採用に対し大きな変化がもたらされるだろう。

2.医薬業界での最近のトレンドにおける微生物迅速試験法について

定期的サンプリング・分析費用、逸脱が生じたときの調査費用、リコールが生じた時のロス費用などの調査がOWB(201年製薬企業7社により発足した Online Water Bioburden Analyzer ワーキンググループ)でされており、コストの観点からも微生物迅速試験法を採用すべきだということを強調していた。
また、逸脱が生じた時の原因の80%は水中菌の有無を確認する培養試験時のヒューマンエラーだという報告もOWBAからされており従来の培養法が非効率である、微生物に関しては未だに前世紀の測定法を用いており分析結果が出るまでに1週間もかかるのはギャンブルに近い、ということを説いていた。


ワシントンの風景
建物の移り変わりが早いようである。

                                        以上

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